MENU
PCサイトを表示
シェアブックス スタッフが送るたわいもない日記
買取してきた本の中で、とても興味深く面白そうな本があったので読んでみた。
その本とは「謎の独立国家ソマリランド」(高野秀行著)
皆さんはソマリランドと言う国をご存じだろうか?
僕はソマリアは聞いた事はあったが、ソマリランドと言う国があるのは知らなかった。
そのソマリアについて知っている事といえば、海賊のイメージとブラックホークダウンという戦争映画の舞台が確かソマリアだったな~という位の浅い知識だった。
この本を読み終えた後は、僕のソマリア、いやアフリカに対する印象がガラッと変わった瞬間だった。

この本では、【謎の独立国家ソマリランド】【海賊国家プントランド】【リアル北斗の拳の南部ソマリア】と大きく三つの地域に分けて話は進んでいく。
この謎すぎる国に著者が持ち前の行動力と運を武器に4年に渡る長期取材をしていき、さらには無謀ともいえる危険な地域への取材を進めていく様は読んでいて痛快で、自分の知らない環境と文化に驚きの連続だった。

【ソマリランド】
ソマリアは一つの国ではなく複数の連邦構成体が分裂状態にあり、飢餓・内戦・海賊等の様々な問題を抱え、政府の腐敗度を示す腐敗認識指数では北朝鮮と並び最低評価をされている国だ。
そんな無政府状態の崩壊国家と呼ばれているソマリアの一角に、10年以上も平和を維持している独立国家がソマリランドで、日本と同等くらい平和で民主的なこの国を、著者は「天空の城ラピュタのような国」と称している。
ソマリ人の特徴は、黙っている大人しいソマリ人は殆どいないらしく、まくしたてる様に自分の好きな話をし、興味が無くなるとさっさと次の話題に移り、自己主張と交渉力がべらぼうに強く、日本人とは真逆の人種らしい。
だが意外にもテキパキと行動して仕事が早く、陽気で人当たりも良く、ホテルのサービスなんかもかなりいいようだ。
ただその機敏な動きで仕事をしているのは、本を読み進めていくと「カート」(覚醒植物)のせいだなというのが丸分かりになっていく。
イスラム教なのでお酒は全くないのだが、このカートは大半のソマリ人が日常的に使用している様で、ソマリランドには日本の自動販売機並みにカート屋台が並んでいる。
そのカートを常用しながら地元民の生活にどっぷりと入り込み親交を深め、ソマリ人以上にソマリ人の様な動きをする変な日本人と地元民はより密接な関係を構築し、本音で奥深い話しをしてくれる。
この様な事を書くと眉をひそめる人もいるかもしれないが、これがこの国の現状でライフスタイルとして確立されていて、日本で皆がワイワイお酒を飲んでいるのと何ら変わりはない。
ソマリランドにはソマリランド・シリングという独自の通貨が存在し、軍隊や政府、さらには民主的な選挙もあり、治安も良く平和を維持し続けている国家なのだが、国際的に国とは承認されておらず、その為「謎の自称独立国家」の位置づけとなっている。

【プントランド】
プントランドは正に我々のイメージにある「ソマリア=海賊 」の舞台である海賊国家だ。
最大の町ボサソは「海賊の首都」と呼ばれ海賊マネーで潤っていて、小綺麗な建物が並んでいるのだが、外国人は武装した護衛なしではすぐに拉致をされて、お得意の身代金問題に発展するようだ。
ソマリランドでは護衛等は必要ないが、さすがの著者もここからは地元のジャーナリストと兵士を複数人雇って取材を行っている。
そのジャーナリストの知り合いの海賊にホテルで取材をしているのだが、ここの話しがとてもリアルで面白かった。
仮に海賊を雇ってドキュメンタリー映像を撮るとしたら費用はどの位かかるかをその海賊に聞いてみると、ボート代・人件費・マシンガンやバズーカ砲のレンタル代・通訳・食費等の初期費用で約5万ドル。
身代金は約100万ドルで成功すると地元の有力者に40%程の謝礼と、細部にわたり細かく料金設定が組まれてある。
にわかには信じがたいが、こんな海賊ビジネスが横行しているという。
そう、この地域での海賊はビジネスなのだ。この事実には目から鱗が落ちた。
イスラム過激派とは何も関係がなく、このプントランドでは普通の漁師やちょっとやんちゃな若者達が、このビジネスに参入しているようだ。
いい家に住み、いい車に乗り、綺麗な女性を連れているロールモデルとなる先輩の海賊達がいて、ここの若者はそんな先輩達に憧れているという。
環境といえばそれまでだが、日本ではお笑い芸人やユーチューバーになりたいと言っている若者達とは大違いだ。

【南部ソマリア】
南部ソマリアモガディシュは内戦下にあるリアル北斗の拳の世界だが、町は意外にも栄えており、ネットカフェ・家電ショップ・レストランが軒を並べていて、今まで立ち寄ってきた街とは比べ物にならない程繁栄している。
だが一番危険な地域の無法都市には変わりなく、外国人はいつ誘拐されてもおかしくないような状況らしい。
護衛はもちろんで移動も装甲車に変わり、続編では乗っていたその装甲車がイスラム過激派アル・ジャバーブの襲撃に遭い、命を落としてもおかしくない状況に陥ったことも。
繁栄と危険が調和している、とてもエキサイティングな町だ。
ここにはテレビ局もあり、そのモガディシュテレビ局の敏腕女支局長ハムディが出迎えてくれている。
二十歳そこらの彼女は意外にもソマリ人とは思えない上品さがあり、おもてなしの心を持ち合わせていた。
歳は若いが知的でバイタリティーに溢れていて、毎日アル・ジャバーブ支配下の場所から見つからない様に暫定政権エリアのテレビ局に出勤し、戦闘やテロを取材してVTRを作り、自分もニュースを読み、またこっそりと敵地へと戻っていく。
このハムディとのくだりが、ここの南部ソマリアの若者を代表する思考と行動であり、新鮮で面白かった。

本を読み終わり何とも言えない達成感に浸っていた僕は、ふと家のテレビを付けてみると、どこぞのワイドショーが誰々が不倫しただのを永遠と垂れ流していて、平和ボケしまくっている日本のテレビに辟易したが、この薄っぺらい内容を放送しているそれこそが平和で幸せな国なんだなと思ってしまった。

文体はユーモアもあり軽快だが、内容は民族紛争の本質に迫っていると思う。
ただ著者は氏族について日本の戦国時代の武将に当てはめていて、分かる人には氏族の関係が把握出来ると思うが、日本の歴史教養が無い僕には本当にざっくりしか把握する事が出来なかった。
分家が多くかなり複雑で一度の通読で完全に把握出来た人は、かなり読解力がある人だと思う。
僕にはこの武将の当てはめは、かえって分かりにくくなったので、1ページを使って簡潔に表の様なものを掲載してくれれば良かったのにと思った。

500ページを超す分厚い本を手にして一瞬読むのを躊躇したが、読んで良かったと思う。
ソマリ人の価値観が手に取るように分かり、凄くエキサイティングな国で、その魅惑の国家を愛してしまった著者の渾身の1冊。
旅行記感覚で読めて著者のソマリランド愛がよく分かり、この1冊を読むだけでソマリアの全てが分かると言っても過言ではないだろう。
最近はソマリア関連のニュースが流れると、この本で培った知識と照らし合わせながら、食いつく様に見てしまう 笑
一生行く事はないであろう紛争地域の内情が分かる本で、自分の知らない世界がまた一つイメージ出来るようになった。 興味がある方は是非一読を。

2
2018年にノンフィクション大賞を取っている、「極夜行」角幡雄介【著】を読んだ。

【あらすじ】
白夜の反対で日が昇らない時期が数ヶ月続く漆黒の闇を極夜といい、グリーンランドにある地球最北の村シオラパルク(北緯78度)よりGPSなしで一頭の犬だけを連れ添い、単身で4ヶ月間探検をするという内容。
マイナス40℃に達する極寒の光のない暗黒の地で何度も現在地を見失い、幾度となくブリザードに強襲され、デポしていた食料を全て白熊に荒らされて常に食糧難で行動するなど、次々に降り注ぐ困難な状況下で進んでいく。
普段は月明かりだけが頼りで月光のみで行動するが、頼りの月も出ない日は真の闇が訪れる事になる。
ナビゲーションの要となる六分儀を失い、その後は地図とコンパスのみで極夜を進む事となる。
常に命の危険が伴う圧倒的な大自然を計4ヶ月間、その内80日間の真の闇を体験し、その極夜明けの太陽を見て何を思うのか。
読む者を強烈に闇の世界へ誘いこむ極限のサバイバルノンフィクション作品。

【感想】
未知の空間を見つけるのが難しくなってきた現代で「極夜」という見事なテーマの冒険を選んだ著者にセンスを感じ、題名だけで読んでみたいと思った。
この本で白夜とは異なり、日が昇らない極夜という存在(空間)がある事を初めて知った。
スタート地点のグリーンランドシオラパルク先住民族のイヌイットは、1818年に部族以外で初めて見る外の世界から来た探検隊に対し、「お前は太陽から来たのか。月から来たのか。」と尋ねたらしい。
イヌイットは太陽と月という恩恵も厳しさも最大限に受ける過酷な地に存在し、シンプルだが生命体の本質はこういう事かなと感じた。
旅の目的はどこかに到達する事ではなく、極夜という特殊環境そのものを体感する事にあり、僕の知らない未知の空間と闇の本質に迫る本書にぐいぐい引き込まれていった。

著者は冒険とは「脱システム」という持論を掲げて冒険している。
本の中で印象に残った一文を

「毎日、太陽が昇り、夜は人工灯にかこまれ、常時、明かりの絶えないシステムの中で暮らす現代人にとって、二十四時間の闇が何十日間もつづく極夜は想像を絶する世界であり、完璧にシステムの外側の領域である。わけの分からない世界である。
極夜世界においては、極夜そのものが未知であるのはもちろんのこと、極夜に付随する諸々もまた現代人にとっては未知である。現代人は常に明かりにかこまれ、人工的に発生させたエネルギーで文明生活を享受し、その意味で知覚能力および感受性が鈍磨しているため、夜、昼、太陽、月、星、光、闇といった現象や天体の本質的な意味が分からなくなっている。下手すれば、それらは生活の中になくても困らないんじゃないかとさえ考えられるようになっている。
だが、極夜世界では現代システムでは非本質的とみなされるようになった光や闇や天体といったものが、本質的存在として私の旅の継続の、もっといえば私の命の鍵を握っている。
もし私が今度の旅で現代システムからうまく外に飛び出して、極夜世界に入り込むことができれば、それは現代人にとって無意味なものとなり果てた夜や昼や太陽や月や星や、そしてそれらを総合した光と闇の意味を知る旅になるはずだ」原文ママ

地球上にこんな場所があるのかと、さらに自分では考えもつかない著者の持論が、東京というシステムのど真ん中で生活している僕の胸に突き刺さった。
日常の大部分をテクノロジーに依存して、本来人間が持っている能力が錆付いていっているのさえ感じ取れぬまま生活している。
まあ、それは普通に生活をしていれば仕方がない事なのだが、こんなにもハッとさせてくれて気付きがあった本は久しぶりだった。
僕にはそんな命を懸けた冒険は肉体的にも精神的にも到底無理な話だが、自分にテーマを課し、極限状態を体感し、表現している著者を羨ましく思った。
僕は温々としたとても快適な部屋で本を読んでいるが、この手の本は主人公が窮地に追い込まれる程、読み手としては面白くなってくる。
悲惨な体験をしてもらえればもらう程、面白く感じてしまうのが人間の性なのだ。(自分だけかもしれないが)
その点でいうと逆境と絶望の連続で、もしかすると犬は最悪な結末を迎えるかもしれないなと思いながら終始スリリングに読めた。
人によっては読むのをやめてしまうかもしれないような下品と感じるような表現もあり、好き嫌いはあるかもしれないが、僕は知的でユーモアがあり読者に媚びていない文章が面白いと思った。

本には写真が全くないので文章から想像するしかないが、文章表現が素晴らしく、僕の頭の中ではページをめくるたびに鮮明に描写する事ができた。
想像してほしい、人工物が全くなく、生物の気配すらないマイナス40℃にも達する静寂の暗黒世界の中で見る月を。
メインテーマである極夜は勿論だが、それ以外でも犬と人間の関わりかたや、狼と犬との著者の考察も面白かったし、月と天体の描写等、全てにおいて哲学的で面白かった。
寝食を共にし、いくつもの難問を一緒に潜り抜け、一心同体であるはずの最大のパートナーである犬ですら最悪の事態では食料にしようと計算していたのが、心身ともに極限状態だったのを象徴していた。
極夜の旅が終わった時に感じたのは喪失感だったらしいが、それもまた納得だった。
本を通じて、壮大で見事な極夜の世界へ僕を連れ込んでくれた著者に感謝したい。

1


↓おまけ↓4ヶ月ぶりに見る極夜明けの太陽の動画があったので貼っておきます↓

この仕事をやり始めた頃は女性のお客さんは男性に比べて少なかったがここ数年でかなり増えてきていて、今ではシェアブックスの出張買取と宅配買取の男女の割合は約半々程になっている。
その中でも特質すべき事は女性コレクターが格段に増えてきた事だ。
主婦の人が片付けも兼ねて子供の物を売るという構図は初期の頃から変わりはないが、コレクターと呼ぶに相応しい拘った商品を売ってくる女性が本当に多くなった。
以前は女性のコレクターは本当に少数だったが、最近はかなり増えてきた様に感じる。
アニメやサブカル文化が市民権を得て一文化として根付いているので、女性もオタクを臆することなく前面に出しやすい時代になってきたと思う。

そんなつい先日、横浜市の青葉区に本・漫画・写真集・DVD・ブルーレイ・フィギュア等を合わせて600点程の出張買取に行ってきた。
30代だろうか、笑顔が印象的な落ち着いた女性が依頼主で、玄関に綺麗に商品が並べて置いてあった。
漫画や写真集等は査定額がいくらでも売るつもりだが、分けてあったDVDとブルーレイは値段次第で売るかどうかの判別をするという。

DVDとブルーレイは初回限定盤のBOX等レアな商品が殆どで、その内の半分は未開封の新品だった。
開封済みの物もシュリンクの上の開封する部分だけ開けられていて、他の全体のシュリンク部分は箱やケースに傷が入らない様に綺麗に残されていた。
几帳面で物を大事に扱っているコレクターの人はこの保存方法をやっている人もいるが、ここまでやっている人は決して多くはなく、女性となると稀となる。(あくまでもシェアブックス調べ)
ほぼ新品と変わらないので、マイナス査定をする要素がなく、当然高値での買取りになった。
相応の査定額を提示したら、殆どの商品は買取OKだったが2点だけ断られた。
その理由までは分からないが、何か拘りがあるのだろう。

男性とは違って女性ならではのフィギュアや写真集等のコレクションは新鮮で面白いなーと思いました。
3月に入って少し忙しくなりました。
3月末まで10%UP買取りキャンペーンを行いますので、本・DVD・ゲーム等の出張買取と宅配買取は是非シェアブックスをご利用ください!

1
買取に行った時に寄った鳥カフェにて
PCサイトを表示
電話 0120-316-314(フリーダイヤル)
電話受付:年中無休 [ 10:00 - 19:00 ]
通信中です...しばらくお待ち下さい